前職の設計事務所で箱根本箱の担当をしていた時に出会った自遊人。このプロジェクトが終わったら独立するつもりでいたのですが、気がつけば自遊人、特に岩佐の魅力に惹かれて転職を決めていました。特にすごいと感じたのは、ものを考える際の判断力とスピード感。トレンド・社会情勢・採算性・何が人々に響くのか、全部を見た上で大事なところを外さず突いてくる。現場に足を運び、「この壁は壊そう、階段は無くしちゃおう」といった大胆な発想も目的につながるのであればズバッと決めてしまう。もちろんその判断は、予算や収益計画に責任を持つ立場だからこその選択です。これは、独立して設計の仕事を請け負う側では身に付かない事業者視点と経験が得られるチャンスだと感じたのは大きかったですね。


入社後は、松本十帖立ち上げプロジェクトに参画。全体統括の岩佐のもと、ホテルリノベーションを発注者の立場でやらせてもらうのはとても新鮮でした。特に今回の松本十帖は、今業界でも勢いのある設計事務所2社が関わって完成しています。設計士としてはまだひよっこの自分が、大先輩をディレクションする立場に身を置く不思議な感覚。そして浅間温泉だけに、そんな先輩たちとも温泉で裸の付き合いをしながら素の話が聞ける。なかなかできない貴重な経験でしたね。一方で、自分自身がやはり設計として手を動かしてみたいとウズウズしてきたのは事実。そんな時、自遊人では必ず「やっていいよ」と言われるのは見えています。事業計画、収益予測、根拠などを固め、たとえばこの浅間温泉の中に、自分が設計した新たな施設や場を創り出す挑戦をしてみたいと思っています。


まちづくりに終わりはありません。だからこそ、持続的な関わり方を考えていかなければいけない。私たちはまだホテルをつくっただけなので、もう一歩踏み込まなければと思っています。「まちづくり」という言葉が世の中にあふれている今だからこそ、きれいごとを語るだけでは意味がない。自遊人だからこそできること、自遊人がやるべきことなどを改めて考えていきたいですね。浅間温泉の経済を活性化させるためには、一時的ではない形で観光客を増やすことはもちろん、ここで商売や新たな挑戦をしようと考える人を増やすことが必要。私たちがやっているのはコンサルティングじゃありません。自社で資金調達して、ビジネスとして成立させる覚悟で始まったプロジェクト。経験もまだ足りない自分に、会社の命運を握る多くのことを託してくれている感謝と責任を身にしみて感じつつ、私にしかできないクリエイティブを形にしたいです。

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Profile
吉野歩Ayumu Yoshino
2019年入社/群馬県利根郡川場村出身
1990年生まれ。明治大学大学院卒業後、海法圭建築設計事務所にて「箱根本箱」のプロジェクトマネジメントを担当。独立をめざし退職するも、ビジネスと感性を学ぶために自遊人に入社。現在は、「松本十帖」のエリアリノベーションや、レセプションの設計を担当しつつ、有名温泉地での新規案件のプロジェクトマネジメントも任されている。