トップページ もう一度泊まりたい宿 第7回 民宿いけしょう 【長野・野沢温泉】

精一杯のもてなし料理で心まで満足。
高級旅館にはない「豊かな時間」


「内湯のない民宿」というと、きっと「かなり古くて、すきま風の吹くような宿なんだろうな」と思うでしょうが、『いけしょう』は平成8年に新築していて快適そのもの。築100年以上の小民家を再生した建物は風情も抜群です。

「できるだけ昔の建物の形を残したくて」

と宿の主人が言うように、部屋の間仕切りがふすまだったりしますが(鍵のかかる部屋もあります)、それもまた風情。

5室しかなく、平日の部屋が空いているときはグループで貸切利用するのもおすすめです。

ちなみにこの宿の再生を行ったのは、古民家再生では第一人者である、建築家の降旗廣信氏。美ヶ原温泉の『旅館すぎもと』、鹿教湯温泉の『三水館』、下諏訪温泉の『みなとや旅館』などを手掛けた建築家といえば、ピンと来る人も多いことでしょう。

いけしょうの建物は「昔ながら」のようでいて現代人のライフスタイルにあわせた設計がなされているのです。

おすすめポイントは建物だけではありません。

料理がなかなか美味しいのです。
囲炉裏端でいただく食事はけっして豪華なものではありませんが、地元の食材を使った精一杯のおもてなし料理。

「もう食べられない!」
というほど量も多く、そこにまた、もてなしの心を感じたりするのです(個人的にはもうすこし少なくていいと思うのですが)。

実はこの宿、2005年11月号の表紙撮影時に、緒形拳さんに泊まって頂いたのですが、その際、緒形さんは「ここはいい」を連発。8,700円という料金には

「え?本当?世の中にはこんな宿があるんだなぁ」

とずいぶん気に入ったご様子でした(緒形さんも地元の方々と一緒に共同湯に入っていました)。

「いけしょう」はふだん高級旅館に泊まっている人にこそ、泊まって欲しい宿。1泊3万、5万円の宿になにか虚しさを感じたら、ぜひ泊まってみてください。食事もサービスも建物も、高級旅館にはかないませんが、高級旅館にはない「豊かな時間」がここにはあります。

中途半端な高級旅館に泊まるくらいなら、こういった民宿に泊まるほうがはるかに豊かな休日になると思うのですが、いかがでしょうか。

民宿いけしょう【長野県・野沢温泉】
所在地:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8927
TEL:0269-85-2138
宿泊料金: 1泊2食8,700円〜(休前日同料金)
施設:館内に風呂はなし(共同浴場を利用)
チェックイン:15:00
チェックアウト:10:00
電車でのアクセス:JR飯山線戸狩野沢温泉駅から野沢温泉行きバスで約20分、「野沢温泉」下車、徒歩約5分(駅からの送迎あり、要予約)
車でのアクセス:上信越自動車道豊田飯山ICから国道117号を経由して約30分
地図:Googleマップ
HP:なし

「昔ながら」のどこか懐かしい風情をたたえながら現代人でも快適に過ごせる貴重な宿。静夜の灯りも暖かな雰囲気。

豪華ではないが、地元の食材を使った味わい深い料理が並ぶ。囲炉裏端での夕食は風情たっぷり。とても民宿とは思えない。

野沢温泉のシンボル『大湯』。温泉街のほぼ中心、大湯通り沿い にある。浴槽は2つに仕切られ、ぬる湯とあつ湯、両方が楽しめる。