料理人になろうと思ったのは、高校時代。母親の手伝いをしたり、家でキッチンに立つ機会も多く、気がつけば料理の仕事がしたいと思うようになっていました。つくること自体も好きで、アルバイトや就職先もずっと飲食業。そんな中たまたま知り合った、南魚沼市の隣町、十日町役場の方から紹介を受け現地の地域情報発信館「いこて」で働くことになり、新潟にやってきました。父が長岡市、母が出雲崎町出身、新潟県は小さい頃からよく訪れていたこともあり、ゆかりのある好きな土地。移住することにも、抵抗なく馴染めたと思います。ここで出会ったのは、すばらしい農家さんでした。特に合鴨農法でお米をつくる「ごんべえさん」とは仲良くしてもらい、紹介されて働くことになったのが、里山十帖です。気がつけば、1年とちょっと。興味のままにいろんな職場を経験した私が、腰を据えて働きたいと思える職場に、やっと出会った気がしています。
里山十帖の魅力は、なんと言っても一緒に仕事をするメンバーです。特に、シェフ桑木野さんとの仕事は、日々驚きと学びの連続です。技術はもちろん、素材のポテンシャルを活かす理論や管理方法。どんな味付けをしても、素材以上にはならないのが料理なんだと知りました。時期のものを使う。気候の力を借りる。自然の流れに沿った旬のものを、そのときに食べる。それが一番なんだと実感します。地域の風土や歴史、文化、さらに農林漁業の営みを「料理」に表現しながら、この土地や暮らしている人を経済的にも豊かにしていく「ローカル・ガストロノミー」をテーマにしている里山十帖。料理人として、食の可能性を追求し、自らを高めながらも地域のためになっていることが感じられるのは、ここならではないでしょうか。
ミシュランガイドやゴ・エ・ミヨなど、里山十帖は近年対外的な評価が高まっています。実は、つくることと同じくらい食べることが好きな私が、ここに来たいと思った理由のひとつが「味」。シンプルですが、自分自身が好きと思える味がある場所で働けることは、幸せそのものですね。ここには、決まりきったレシピはありません。自然と対話をしながら柔軟に、素材が最も活かせる調理を考え、見出していくことで、好奇心が満たされていく。私自身は、今夢を探している途中ですが、しっかりと期待に応えられる料理人になっていきたいです。冬は雪がすごくて通勤も一苦労ですが、都会ではお金を出しても買えない環境がここにはある。そんな場所に身をおいて料理に向き合いたい方には、この上ない場所だと思っています。
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Profile
柴山紗希Saki Sibayama
2019年入社/埼玉県出身
1993年生まれ。十文字学園女子大学 食物栄養学部を2年間通学しその後1年の休学を経て途中退学。その後埼玉、東京で塚田農場、セイアカフェ、ポルココーダffダイニング、ブラッスリーセントベルナルデュスでのアルバイト経験を重ねる。ある時友人の紹介で出会った十日町産業文化発信会館「いこて」で勤務するべく十日町に移住。2019、自遊人「里山十帖」に入社。アシスタント・フードディレクターとして日々、季節と向き合いながらシェフの下で料理の腕を磨く。