収穫した稲は天日干しに。中古で買い集めた「バインダー」3台は自遊田だけでなく、近隣の農家へも出張。横を通りかかるご近所さんからは「おっ、懐かしい機械を使ってるなぁ」。コンバインが主流の今では骨董品のような存在。

 思わぬハードルもありました。それが「減反」と「戸別所得補償」です。
 ご存じのとおり、現在の日本には生産調整、いわゆる減反政策があるわけですが、新潟の場合、仮に農家の方が1町歩(=10反・1ヘクタール)の農地を持っていたとすると、3反が減反で耕作できるのは7反です。「貸す」ということになれば「その減反分を」、ということになるのですが、もし私たちに減反分の3反を貸したとすると、貸し主の農家は残った7反のうちさらに3割を減反しなくてはならず、5反しか耕作できなくなってしまいます。となると、農家の言い分としては「減収分をどう補填してくれるのか?」ということになるのです。
 さらに。まったく耕作していない土地(半耕作放棄地)にもけっこう需要があります。なぜならその土地を借りれば、借りた農家は減反分に充てられるから。"誰も使っていないが使えない"農地も多いのです。
 2009年12月施行の農地法改正で、減反は義務ではなく農家の選択制になりました。でも実際には集落営農上、一軒だけが減反を守らないわけにもいきません。なぜなら農業関連の補助金は集落単位に出ることが多いのですが、その条件に減反を守ることが掲げられていることが少なくないのです。となると「国から出る集落全体の補助金分をおたくが出してくれるなら」という話さえ出てきます。
 さらに民主党政権の目玉、「戸別所得補償」も障害になりました。1反あたり1万5000円。私はこの制度自体は政策として間違っていないと思うのですが、農地の賃借となるとこう考える農家もいます。「人に貸したら1万5000円もらい損ねる」。すると当然ながら「小作料(賃料)に1万5000円を上乗せしてほしい」となります。さらにやっかいなのが米粉用のお米や飼料用米の戸別所得補償が1反あたり8万円であること。ある地域の農家から聞いた話では"地主3万、小作5万"とか"地主4万、小作4万"とか、そんな話が実際に出ているようです。どう考えても制度本来の趣旨とは違うのですが。