草を刈り、水を張り、苗が植わった田んぼは、見違えるほど美しい姿に。農地は作物が植えられてこそ、と改めて日本の農地の現状を考えさせられます。農場長の平澤は毎日、その他のスタッフは日替わりで農作業です。

 そして代かきをするために田んぼに水を張ると、さらに衝撃の事実が待っていました。水面一面に雑草の種、とくにヒエの種がビッシリ浮かんだのです。
 ヒエと言っても、食べられる雑穀のヒエとは種類が違います。イヌビエといい、食感は石のようにジャリジャリ。とても食べられません。
 その種の浮かんだ光景は、本当にへなへなと腰を抜かすほどで、笑っちゃうしかありません。
「ヒェー」
 農場長の平澤がのけぞりました。でもシャレを言って笑っている場合ではありません。一度張った水を排水してもう一度。まだ多くの種が浮いてきます。
「きっと想像を絶する量の種が埋まってますね。焼け石に水かもしれないけれど、代かきも3回にして種を流しましょうか」
 積極的な平澤に対して、私はへなへなの超弱気です。
「もう間に合わないだろう。仕事も押しているし、これ以上、農作業の時間はとれないよ」
「もっと早朝からやればいいんですよ。岩佐さんが」
「ヒェー」
 ニコニコ笑いながら、言うことは鬼のようです。
 こうなると土砂降りだろうがなんだろうが、農作業です。そして田んぼの代かきに四苦八苦しているうちに、畦(あぜ)や周辺が大自然、つまり草ボーボーになりつつありました。
「まるでジャングルだね」
 またまた弱気な私が言うと、平澤が力強く言いました。
「自遊人総動員法でいきましょう」
「ヒェー」
 自遊人は女性の多い職場です。よく「女性が多いと華やかでいいでしょ」とお客様に言われますが、当社の場合は「うーん」という感じです。というより、世の中、女性の時代だと言うことをひしひし感じます。女性は逆境に強いですから。