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もうひとつ、読者の方から多く質問をいただいたのが「山の中の採算が悪いのはわかったけれど、では平坦地で稲作をしている一般的な専業農家の採算はどうなっているの?」という内容です。それは言い換えれば、「日本の米の価格は適正なのか」ということです。
現在、日本の米の価格は国際価格から考えて、大幅に高いと言われています。減反を完全撤廃すれば、農業関連の補助金を大幅に減額すれば、輸入を自由化すれば、日本の農家は自分自身で競争力を取り戻して、消費者はより安く美味しいお米を食べられるようになる。そんな論調があったりします。
たしかに一理あります。魚沼という地で6年暮らして思うのは、日本の農業政策は「さすがに過保護すぎたよなぁ」ということ。過保護すぎて農家が自分で考える力を失ってしまった、そんな気がしてなりません。
とはいえ、農家の全員が考えなくなってしまったのかといえば、そんなことはありません。必ず地域に1人や2人は頑張っている専業農家がいます。そしてそんな専業農家は品質を向上させつつ、コストダウンの方法をたえず探っています。
現在、個人経営の稲作専業農家が採算を成り立たせるためには
15ヘクタール(=15町歩=15万平方メートル=東京ドーム約3・2個分)から20ヘクタール(東京ドーム約4・3個分)は必要だと考えられています。
そこで先鋭的な稲作専業農家の採算を算出してみました。
15〜20ヘクタールとなると、夫婦2人ではちょっと厳しいのが現実です。跡継ぎの息子さんもフル稼働、もしくはシルバー人材などを活用していることが予測できます。
農業用機械も、スピードも馬力も、最高のものが必要になってきます。トラックも軽トラだけでなく1・5トンクラスのものが必要でしょう。
農協を通さずに販売するのであれば、乾燥・調製設備も必要ですし、農機具小屋も大きなものが必要です。
さて、どうでしょう。計算結果は税込みにすると特別栽培米で1kg384円です。(※精米、小分け作業、運賃等は一切入っていません。一括で業者が引き取ることを前提とした生産者の原価計算です。なお計算はコシヒカリで、あきたこまちやミルキークイーンなどの多収量米はこれより原価が下がります)
これを安いと見るか、高いと見るか。地域で一、二を争う専業農家のコスト計算です。実際にはこれよりも高いことがほとんどで、しかも先鋭的な専業農家の年収としてはかなり控え目です。その一方で平坦地で大量に作っているお米ですから、味はそれほど特別なものではありません。
もちろん、農機具のメンテナンスを自分ですることによってさらにコストを下げたり(元々農機具メーカーに勤めていたとか)、自分で2枚の田んぼの畦を抜いて1枚の田んぼにして作業効率を上げたり(元土建業)、といった農家もあります。広大な一群となった農地を持つ北海道ではこの計算の2〜3倍の面積を個人農家でも耕作することができます。
北海道以外の専業農家も15〜20ヘクタールでは将来の経営が成り立たないことを十分に理解していて、さらに大規模経営を目指す農家が増えています。すでに本州でも50〜100ヘクタールの農地を耕作する生産法人が多数生まれています。とはいえ、大規模法人でも従業員を通期雇用できないケースが多く、経営は容易ではないのです。
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