自然な寝姿勢を保つ「ふとんエレメント」
理想的な寝姿勢とは、立っているときと同じように背骨がすっと自然に伸びた状態。横になっているときは背骨がまっすぐに、仰向けになっているときはS字カーブそのままに。つまり理想的な寝姿勢を得るには、体型に応じて敷布団が柔軟に変化することが重要です。
そんな理想的な寝姿勢を簡単に得られるのが「ふとんエレメント」。スイスのヒュースラー・ネスト社の製品で、布団の上げ下げを考えて軽量化された、3つ折りにできる日本専用の商品です。石田屋ではこれを敷布団の下に敷くことをおすすめしています。
「ふとんエレメント」は一見するとすのこのようですが、ただのすのこではありません。いちばん下にはラテックスがあり、その上にトリメール板と呼ばれる細い板が何本も敷いてあります。このトリメール板がたわんでスプリングの役目を果たすのですが、どんな姿勢に対しても体にあわせてぴったりとフィットして、常にベストな姿勢をキープしてくれます。たとえば横になって寝たとき、硬い寝具ですと肩やおしりがぶつかり、背骨を歪ませてしまうのですが、「ふとんエレメント」なら肩やおしり部分の板がぐっと沈み、腰部分は板が身体にフィットして支えてくれるので、常に背骨はまっすぐに保たれます。
使用している素材は天然素材100%。ラテックスは天然ゴム100%ですし、トリメール板はアスペンとメープルの無垢集成材。それを包んでいるのはオーガニックコットン。素材にはとことんこだわった商品です。
100年の耐久性をもつ馬毛の敷布団
その上に敷くのが「ムースブルガー 馬毛敷布団」。馬毛はヨーロッパでは最高級品の寝具として知られ、その耐久性は100年以上。本来ストレートの馬のしっぽをきれいに洗浄したあと、繊維をならしてからぐるぐるに丸めて蒸します。そうしてスプリングをつけた馬毛を大量に使ったのがこの馬毛敷布団。およそ1枚に50頭分の馬毛が使われています。
馬毛の寝心地は、硬めながら包み込むような独特のホールド感。さらに通気性・吸湿性・放湿性が抜群に優れているため、寝たきりの方が使うと体の蒸れや痛みが大幅に軽減します。なんと布団1枚分で、約50リットルの吸湿性を持っていると言われ、強靭な弾力性により圧力がかかった状態でも通気性を保つことができるのです。
しかもしかもメンテナンスがラク。「ムースブルガー 馬毛敷布団」は通気性抜群ですから基本的にメンテナンスフリー。カバー類をこまめに洗濯するだけで、特別なお手入れは不要です。中綿は小さな布袋に入ったパーツに分かれていて、これを取り出したら側生地も洗濯OK。馬毛自体も水洗い可能で、パーツをまるごと洗濯機に入れて洗うこともできます。ただ、天然の色素が色落ちしやすいので、気にされる方にはおすすめできません。特にひどい汚れが無い限り、晴天が2日以上続いた日に陰干しするだけで、馬毛が持つ天然の抗菌効果を維持できます。
体重がとくに強くかかる部分が傷んだら、その部分のパーツだけを交換することもできます。10年に一度、当社へリフォームに出していただければ、すべてを洗浄して、傷んだ部分を交換して、新品に蘇ります(有料)。
敷布団にも、ぜひベッドパッドを
究極のセットは、さらにその上に「ムートンベッドパッド」を。「敷布団にベッドパッド?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、人間は睡眠中に一晩で200ミリリットル以上の汗をかきます。夏場は倍になると言われ、汗かきの方は1リットル近くにもなります。
馬毛は抜群の吸湿性・放湿性を誇りますが、さすがに毎日200ミリリットルもの汗を吸わせていては痛みも早くなります。そこでベッドパッドの登場なのですが、通常はオーガニック・ウール素材のもので十分です。でも、せっかく馬毛の敷布団を使うのですから、ベッドパッドも究極のものを使いたいもの。
「ムートンベッドパッド」はオーストラリア産メリノ種のムートン。しかも生後6〜12ヶ月の貴重な「ショーンラム」の毛だけを使用しています。1センチ四方になんと平均3300本の羊毛を使用しており、密度感やスプリング効果も抜群。長さ2.5センチに刈り込まれた1枚のベッドパッドには、なんと約8〜9頭分もの羊毛が使用されています。
ムートンと聞くと「冬用」をイメージしますが、高品質のムートンは綿素材よりも吸湿・放湿性に優れ、冬暖かく、夏涼しいのが特徴。年間を通じて快適に使えます。しかも高品質のムートンは毛の表面に天然の脂が微量ですが含まれているため、汚れが付きにくいのもポイント。シーツを使用しなくても、汚れはほとんど気になりません。日本国内で丁寧になめしているので、もちろん動物臭もまったくしませんし、抜けもありません。
価格は高価ですが、適宜リフォームをすれば長期間にわたって使用することができます。高密度のショーンラムの毛は、体重の加圧による捻れやスレにも強いため、長期間にわたって使用できるのです。リフォームの目安は腰などの体重のかかる場所がつぶれて立たなくなってきたら。羊毛はその品質に関わらず、圧力がかかるとフェルト化しますが、完全にフェルト化する前にリフォームするのがおすすめです。
使う人の体重や使い方によって差はありますが、だいたい5〜10年使ってメンテナンスすれば、さらに5〜10年の使用が可能。汚れは5年に一度洗浄するのが目安ですが、洗浄もリフォームも石田屋で責任をもって行いますので、安心してお使いください(有料)。
ちなみに「ヘッフェル ウールパッド」と、寝心地はまったく異なります。垂直に立つほど密度感があるショーンラムの毛は、体をしっかりサポートして、体圧を分散してくれます。しかも肌触りも抜群。価格はかなり高くなりますが、違いは明らかに体感できます。その究極の寝心地をぜひ体験してください。
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このセットはもう、「麻薬」というほかありません。一度体験したら忘れられない心地よさ。寝姿勢がラクで睡眠が深くなるだけでなく、睡眠が快感に変わってしまうのです。このセットを体験すると、もはや、どんな旅館や高級ホテルでも「うちの布団のほうが寝心地がいい」と感じてしまうほど。究極の寝心地を手に入れることは、ある意味、危険を伴います。旅は好きでも旅先の睡眠が楽しくない……。これはちょっと不幸かもしれません。
(雑誌「自遊人」編集長 岩佐十良) |
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