気温は鶴岡とほぼ同じ
だから美味しい!
阿蘇の米と聞いて、「美味しそう」と思う人はいないかもしれません。というより九州の米に美味しそうなイメージはありません。でも阿蘇のカルデラ内の平均気温は山形県・鶴岡と同じ、と聞いたらどうでしょう。
九州内はもちろん、西日本では山間部を除きコシヒカリの栽培は難しいのですが、ここ、阿蘇で栽培しているのは正真正銘、コシヒカリ。ボソッとした食感が多い西日本の米にあって、阿蘇の米はもっちり。かなりの食味を誇るのです。
美味しいワケは、標高による平均気温の低さだけではありません。カルデラですから盆地と同様、昼夜の寒暖差があります。しかも水が豊富。気になるのはカルデラ内の土ですが(通常、火山灰土は野菜の栽培には適していても、田んぼには向きません)、阿蘇のカルデラは約9万年以上も前にできたもの。土も粘土質に近い黒土で、美味しい米づくりには十分な条件です。
生産者の内田智也さんとの出会いは、内牧温泉の観光に尽力する、ある旅館オーナーと市役所職員の紹介から。私が内牧を訪れた際に「若手の頑張っている生産者はいませんか?」と聞いたことから始まりました。
現在の耕作面積は約100町歩で、九州の稲作農家としてはかなりの規模。社長であるお父さんの孝昭さん、義理の兄の西村真登さんをはじめ、計5人で減農薬コシヒカリの栽培に取り組んでいます。農法や資材の研究にも余念がなく、輸入米に対抗にするコスト削減の切り札とも言える“直播き”にも積極的にチャレンジ。私が訪れた際にも他の地域での導入事例に関して積極的に聞いてきたほか、自遊人ファームで導入している紙マルチに関しても興味津々。
「紙マルチによる有機栽培は実際どうですか?」
「アイガモ農法と比べて手間はどのくらい削減できますか?」
など次々と質問が飛びだしてきました。また、農地集約にも積極的で、「将来は200町歩くらいまでは広げていきたい」と意気込みます。
減農薬・減化学肥料の特別栽培コシヒカリで5㎏2600円(玄米)。『強い農業へ』プロジェクトには、とくに湧水が最初に注ぐ、水と土のいい田んぼのお米を分けてくれることになりました。
将来の夢は? と聞くと
「若さを活かしてどんどん米のレベルを上げていきたい。阿蘇の米は日本一と言われるくらいまで品質を向上させて、地域を盛り上げたいですね」と頼もしい言葉が。
九州内ではもちろん、西日本でも指折りの米生産地となり得る阿蘇カルデラ。世界一のカルデラで世界一の米が生産される日が来るかもしれません。 |
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